病院は治療する場である?
病気になって入院する場が病院である。
がんであれば、手術で腫瘍切除したり、抗がん剤や放射線治療をするかもしれない。
糖尿病ならば、食事療法・薬物療法・運動療法を軸に、インスリンや投薬調整にて血糖コントロールをするだろう。
わかりやすい病気のわかりやすい治療はもちろん必要である。
でも、「生きる」ためではなく、「死なない」ために入院される方も多いのが日本の現状のように感じることがある。
「食べたくないんです」をどう考えるか
入院してからではなく、入院する前から食思低下で、痩せが進行している方もいる。
食思低下の要因が、リハビリをしていない、ベッドから起こさない、食事内容の工夫をしない、などの医原性サルコペニアであれば、医療者側や病院側の体制の問題で論外です。
でも、「食べられない」「食べたくない」「おなかもすかないから苦痛じゃない」と訴えがある場合。
それは患者さんの命が選んでいることの場合もある。
食べないから、栄養状態が悪いから、リハビリがのらないから。そんな理由で、患者さんに無理やり食べさせたり、栄養状態をあげようとするのは、医療者側のエゴになるかもしれない。
NSTは絶対なのか
病院では NST(栄養サポートチーム)というものがあり、多職種で 1 人の患者さんの栄養状態を評価しサポートしていくことがある。
それはいかに栄養状態をあげることが重要で、その中には高カロリー輸液や胃瘻などの検討も含まれる。
もちろん必要な方も多くいて、その場合は薬剤師や看護師とともにプランニングする。
ただ私は違和感を抱く症例も少なくはない。代替栄養で生かすより、人間らしく枯れるように天寿を全うすることも患者さんにとって大切なことなのではないかと、強く感じることがある。
今、そのような文化が日本には廃れつつあるかもしれないことを危惧している。
忘れられない患者さんの言葉
「食べないから死ぬんじゃない。死ぬから食べないんだよ。」
本当にその通りだと思う。
人生の最期まで、人間らしく患者さんの意思を尊重したい。
尊厳を大切にすることのひとつだと思う。